バブル期の「愛」と「感動」のキャッチコピー

ネット時事

広告のキャッチコピーというやつは、短い言葉の中に多くの情報や情感が込められ、時に時代を超えて語り継がれるものであります。

当時の世相が垣間見える名コピーは読んでいても楽しいですね。

こんなことを急に言い出したのは、このツイートがきっかけです。

地域に「まち・ひと・しごと」を取り戻せるかどうかは、「愛・感動、I can do」の精神がなきゃだめだ

昭和のにおいがする。

これに対して以下のリプがつきました。

私はダジャレから感じる古臭さと浮かれポンチ具合がバブルっぽいなと思いつぶやいたんですが、それに対してn.oさんは単語に注目したみたいですね。

Twitterでテキトーなこと言わなかったら、他に何を言うんだって気もしますが、そのあたりはSNSに対する考え方の違いですね。

@つけてもらってるのに通知が飛んでこなかったんですが取得漏れでしょうか。クオリティフィルターをONにしていたから、自動的にTwitter社のほうで低レベルなレスとして処理されたんでしょうか。

このあたりの仕様がよく分かりません。

そんなことはさておき。テキトー言うなとお叱りを受けたことでもありますし、ちょっくらバブル期のコピーに「愛とか感動とか無かった」のか調べてみました。

さすがに当時の日本で発表されたコピーすべて調べるのは無理があるため、東京コピーライターズクラブのサイトに登録されている、バブル期(1986年~1991年)のコピーから特に有名だったり面白かったりするものを抜粋します。

バブル期のキャッチコピー「愛」

愛情一本 チオビタ ドリンク

妹:お姉ちゃん、お父さんねいつも仕事で疲れた 疲れたって言ってるでしょ。
カワイソウね。
そんな会社 あしたやめちゃえば いいのにね。
お姉ちゃん、そー思わない?
N:お父さんへ、愛情一本 チオビタ ドリンク

妹:お姉ちゃん、お父さんねいつも仕事で疲れた 疲れたって言ってるでしょ。 カワイソウね。 そんな会社 あしたやめちゃえば いいのにね。 お姉ちゃん、そー思わない? N:お父さんへ、愛情一本 チオビタ ドリンク | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

これぞいまでも語り継がれる名コピーですね。

愛は無断でやってくる。

1989年の伊勢丹。抜群のキレ味ですね。

愛は無断でやってくる。 | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

恋が着せ、愛が脱がせる。

これも伊勢丹でコピーライターは眞木準。

恋が着せ、愛が脱がせる。 | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

はじめは恋、あとで愛。

こちらはパルコです。やはり発表年は1989年ですね。

この年はアパレルで愛があふれてたんでしょうか。

はじめは恋、 あとで愛。 | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

愛する人は、あなたを愛してくれますか。

もうひとつパルコから。やはり1989年のコピーでライターは糸井重里です。

愛する人は、あなたを愛してくれますか。 | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

一枚のレタスを冷やすにも 愛をこめて、心をこめて。

アパレル業界で起こった前年の「愛」推しが、翌年にはモスバーガーに達しました。

一枚のレタスを冷やすにも 愛をこめて、心をこめて。 | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

バブル期のキャッチコピー「感動」

愛に比べて少ない、というより、ほとんど登録されてないのが「感動」です。

これはバブル期に限ったことではなく、1960年~1991年まで検索しても感動を「感動」と言葉で表現したコピーはほとんどありません。

それでもいくつか探すとしたら……。

天の庭、スイスへ。感動との出逢い。スイス航空。

これが1991年なのでバブル終盤ですね。

天の庭、スイスへ。 | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

感動、はじまる。アップルマッキントッシュ。

これも同じく1991年ですね。これより遡って「感動」で印象的なコピーとなると、1981年に2つあります。

アップルコンピュータジャパン マッキントッシュ 小学生になろうシリーズ 自転車 30秒 | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

行動・感動・北海道

短い言葉で韻を踏んでいく系は口に出して読みたくなりますね。

行動・感動・北海道 | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

感動は20世紀の宗教だ。

感動ポルノの時代。

感動は20世紀の宗教だ。 | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

1963年の、もっとも感動的な新語バカンス

データベースに登録されている最古の「感動」です。

1963年の、もっとも感動的な新語バカンス | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

番外編

バブルとか「愛」だの「感動」だの関係なく目についたものを並べます。

ベビーブームの僕達は老人ブームでもある

そうなりますわなっていう1986年の広告。

ベビーブーム の僕達は 老人ブーム でもある | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

亭主元気で留守がいい~

もともとはタンスにゴンのCMから生まれました。一度聞いたら忘れられないインパクトと、つい自分でも言ってみたくなる口馴染みの良さがあります。

https://www.tcc.gr.jp/copira/id/9417/
あったかい人を、「こたつむり」というんだよ。
1986年の東芝の広告。こたつむりってそんな昔からある言葉だったんだ。

あったかい人を、 「こたつむり」と いうんだよ。 | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

誰かに何か言われるから、何もしないの?

グサッときました。

誰かに何か言われるから、何もしないの? | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

私だって、日本経済を支えているひとりなんだから、もうすこし、幸せにしてほしい

いいぞ、もっと言ってやれ。

私だって、日本経済を支えているひとりなんだから、もうすこし、幸せにしてほしい。 | 東京コピーライターズクラブ(TCC)

広告と時代の関係性

優れた広告は世相を反映すると最初のほうで書きましたが、それは必ずしも時代におもねることではありません。

バブル期を現役のコピーライターとして生き抜いた岡田直也さんが、広告の持つ批評性について語った文章があります。

さて、バブルのさなかにあって、なぜこういうコピーが出てくるのか。
これはおそらく、広告じたいのもつジャーナリスティックな一面ではないか、
とぼくは思うのです。
時代に迎合するのではなく、世のなかヘンだと思ったら、警鐘を鳴らす。
「ほんとうにそれでいいのか? ちょっと考えてみよう」と促す。
それが、広告の社会的な役割でもある、と考えるのです。

げんに、バブルだからといって、いたずらに投機を誘ったり、
お立ち台で扇子ふりまわしたり、みたいな広告なんて、
コピー年鑑にはいっさい、見当たらなかった。
現実にあったとしても、少なくとも今には残っていません。

そういう眼で、あらためて見直してみると、
例の「24時間戦えますか」も、パロディ、もっといえば皮肉に見えます。
よくこの一行がバブル時代を象徴している、なんて言いますが、
それはあまり広告のことを知らない人が、
表面的な、浅い理解で語っているだけであって、
その本質は、「冷めたまなざし」に相違ない、とぼくは思う。
そういう意味でしか、バブルを背負えることができないのでは、
と思いますね。この一行は。

平野ノラは、きっと知らない。 バブル時代のキャッチフレーズ。 | CM Fun

「ワンランク上の○○」に関しては、バブル期に特有の流行というより、いいコピーが浮かばないライターの逃げ道としてよく使われるといった感じではないでしょうか。

現代でも捻りの無い大量生産・大量消費の広告では、よく「ワンランク上の○○」「ラグジュアリー」が用いられますよね。