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『ハチナイ』のついでに『ドカベン』中学生編(柔道編)を語りたい

野球のキャッチャー

野球が国民的な娯楽だった日本では、野球を題材にしたエンターテインメント作品も数多く生み出され、その時代時代を彩る傑作が人々を楽しませてきました。

本当に野球を題材にした娯楽作品は名作・傑作が多いんですが、そのなかでも間違いなく五本の指に入る名作が『ドカベン』です。

前回の記事で『八月のシンデレラナイン(ハチナイ)』について書き、少し『ドカベン』にも触れました。それで懐かしくなってシリーズの最初のほうを読み返したら、本当に『ドカベン』って最初は野球ほとんどやらないんですよね。

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『ドカベン』をあまり知らない人や、高校野球の漫画であることは薄っすら知ってるレベルの人に話すと驚かれるんですが、主人公の山田太郎が本格的に野球をやるのは単行本7巻からです。

もともと山田は有名な野球少年でした。それが、ある事件をきっかけに「もう野球はやらない」と自分に誓います。その誓いが解けて野球部で活動を開始するのが単行本7巻。

それまで何をやってたか。柔道です。ずっと山田と相方の岩鬼は柔道やってました。

最初は柔道漫画だった『ドカベン』

初登場から単行本6巻の終盤までは主人公が柔道をやっていた『ドカベン』。その柔道も変わってます。学校の部活動が描かれたのは最初のほうだけで、後半になると日本柔道の実力を偵察に来た海外柔道家軍団や、くらうと死ぬまで痛みが取れない必殺技「万年蹴り」を操る酒乱の空手家と山田が対決。

特に激アツなのはVS空手家編です。単行本5巻から、鉄山という恐るべき空手家が登場するんですけど、こいつが困ったことに酒癖がべらぼうに悪いんです。酒を飲んでは暴れるの繰り返し。とうとう山田の爺ちゃんに万年蹴りをくらわせる事件が起きます。

この鉄山と山田がドシャ降りの雨の下で対決するんですね。鉄山の空手に苦しめられながらも抱きつくことに成功した山田は、ベアハッグで鉄山の背骨を折ろうとします

ドカベン_山田VS鉄山

発想が凶悪すぎる!

このとき山田は中学生です。高校野球のイメージが強いため、最初から高校生だったと思ってる人も多いんですが、初登場時は中学3年生でした。

『ドカベン』中学生編には、日本一の柔道家と呼ばれる伊賀谷さんっていうキャラクターが登場しますが、その伊賀谷さんをして鉄山は「自分のライバルだった」と言わしめる実力者です。そいつの背骨を中学生が折る!

しかも理由が「折れた背骨で酒を飲めば地獄の苦しみがあるはず。その痛みで二度と酒が飲めないはずだ」というもの。

カタギの発想じゃねえ!

山田って温厚そうに見えますよね。ずんぐりむっくりしてて怒らなそう。実際『ドカベン』では岩鬼のほうがやかましくて暴力を振るって暴れるキャラクターなんですが、たまに山田もキレ顔を描かれるときあるんです。そのときに見せる山田の迫力と実力行使の凶暴さといったらない。

普段温厚な人物ほど適度に暴れたことがないから、いざキレると歯止めが効かない典型みたいなやつです。

結果的には鉄山の背骨を山田は折りませんでした。折る一歩手前で止めてます。

なんだよ背骨を折る一歩手前って。



『ドカベン』の新規性はキャッチャーを主人公にしたこと

柔道編を経て野球編が開始した『ドカベン』。現在では野球漫画の金字塔として語られる作品ですが、それじゃ『ドカベン』は何が評価されたのか、革新的だったのか。

いろんなところで語り尽くされてる気もしますが、こんなにキャッチャー(捕手)というポジションをメインの主役に据えてガッツリ描いた野球漫画はそれまでなかったんじゃないですかね。

日本だと野球の花形ポジションはピッチャー(投手)のイメージですよね。アメリカだとショート(遊撃手)なんですけど。

日本の野球漫画ではピッチャーを主人公にした作品が圧倒的に多いです。ピッチャーを主人公にするとバッター(打者)との対決を直接的に描きやすい事情もあったと思われます。しかし、実際の野球を知ってれば分かると思いますが、ピッチャーは自分が投げたいボールを好き勝手に投げてバッターと対戦してるわけじゃないんです。

ピッチャーが投げるボールは、基本的にキャッチャーが種類やコースを指示しています。そうじゃないとキャッチャーも捕れないし危ないでしょ。

キャッチャーが対戦するバッターの癖や試合の状況から考えて、このボールだったら抑えられるんじゃないかとピッチャーに指示します。ピッチャーは投げたくなかったら首を振って拒否することもできますが、基本的にはキャッチャーの指示を信頼して投げます。

『ドカベン』はキャッチャーを主人公にしたことで、野球の妙である配球や駆け引きを作品の中心に持ってこれました。野球って動きが少ないスポーツに見えるかも知れないけど、実際は1球ごとにいろんな駆け引きや考えを巡らせています。

その駆け引きの中心にいるのがキャッチャーです。もちろん監督はいるし、監督の役割を描いた野球漫画もたくさんあるんですけど、必ずしも監督が全部の指示を出してるわけじゃないです。

『ドカベン』の商業的な大成功は、漫画界に「キャッチャーを主人公にしてもいいんだ」と知らしめることになりました。いまはキャッチャーを主人公にした野球漫画も増えましたね。矢也晶久の『フェアプレイス』とか、コージィ城倉の『おれはキャプテン』とか。

そういうのも商業的に成功した前例がないと出てこないですからね。後続作品や業界に与えた『ドカベン』の影響は大きかったですね。

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