漫画『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』は同名のライトノベルが原作。小説版はアルファポリス第9回ファンタジー小説大賞にて特別賞を受賞。単行本2巻で完結している。
本作は女性向けライトノベルの定番設定である『悪役令嬢もの』。前世でプレーしていた乙女ゲームの世界に現代日本時代の記憶を持って転生した主人公が、原作ゲームで悪役令嬢に訪れる悲劇的なバッドエンドを回避するため奔走するというのがメジャーな流れ。
『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』では、そこから少し捻って物語の語り部を転生悪役令嬢の婚約者となる王太子にして、最後まで悪役を演じきろうとするも根っからのお人好しゆえに空回りし続ける彼女の姿をコミカルに描く。
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アルファポリスなら『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』が無料で読める
漫画『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』は、アルファポリスのサイト上で無料公開されている。最新話が公開されるたび古い話は有料(コイン制)になるが、アプリ版ならログインでもらえるチケットを貯めることで無料閲覧が可能。
チケットは1日1枚もらえる。漫画閲覧に必要なチケット枚数は作品ごとに違うが、だいたい8枚か12枚。
『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』あらすじ
顔よし、生まれよし、文武両道の天才児で人生イージーモードな王太子セシルは10歳にして生きることに退屈していた。そんな彼は宰相の娘バーティアと婚約することになったのだが、初顔合わせでバーティアは突如「自分は転生者で前世の記憶がある。ここは前世でプレーした乙女ゲームの世界だ」と言い出す。

お前はなにを言ってるんだ状態のセシルだが、それまで自分の周りにはいなかった何をしでかすか分からないタイプの婚約者に興味を持ち、彼女を密かに観察することに決める。
もともと噛ませ犬だったバーティアは、ヒロインを引き立てるため不摂生による肥満で容姿はヒロインに劣る設定だったが、一流の悪の華を目指す過程でダイエットを決意。初顔合わせから1年後には、セシルを驚かせる変貌を遂げた。

お人好しと残念な子属性持ちのバーティアは、自分の希望とは裏腹に悪役令嬢とはほど遠い言動が多く、危なっかしい彼女を見守る「バーティア様を愛でる会」なるものまで後に発足する。

果たしてバーティアは希望どおり悪役令嬢の役目を完遂できるのか。腹黒王子の10年に及ぶ初恋は実るか!?
『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』と一緒に読みたい漫画
『公爵令嬢の嗜み』
事故死したOLが転生したのは前世でプレーしていた乙女ゲームの世界。記憶を取り戻したのは断罪イベントの真っ最中だった!
というところから始まる悪役令嬢転生ものですが、この作品は同ジャンルの作品群の中では設定やキャラクター造形がしっかりしており、長期連載にも耐えられる骨太な構造を有していました。
悪役令嬢転生ものだけではなく、なろう系全般に言えることですが、取りあえず公開してみて反応がよければ連載化という意識があるためか、割と設定周りがあやふやかつグダグダで、本来は知恵を絞るべき場面をキャラクターの掛け合いだけで乗り切る作品が少なくないです。
そこへいくと本作『公爵令嬢の嗜み』は設定周りがしっかりしています。
『レディローズは平民になりたい』
悪役令嬢転生ものにもいくつかのバリエーションがあります。基本形は前世での記憶を取り戻した主人公が、原作ゲームにあった悲劇的なBADエンドを回避するため奔走する形ですが、ゲームのシナリオでそれほど不幸にならないタイプのBADエンドもあります。
上位貴族の令嬢が平民落ちして貴族特権を失うのは、原作のキャラクターからすると悲劇かも知れないが、貴族社会の腹の探り合いから降りられるため前世庶民の主人公には願ったり叶ったり――そんなギャップを利用して平民落ちを目指す物語もあります。
『レディローズは平民になりたい』もそんな物語ですが、パン屋で町娘として働く彼女を元攻略対象たちが放っておかず、平民として平凡な人生を送りたいはずの彼女の人生はイケメンたちの思惑に巻き込まれていきます。
ネタバレあり『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』を読んだ感想
※この先は原作既読組みによるネタバレに一切配慮しない感想です。
現時点で漫画版は12話まで公開中。物語は乙女ゲームの舞台となる学園にセシル、バーティアーが進学し、ヒロインも登場してバーティアの暴走に拍車が掛かる。
バーティアは前世の推しキャラだったセシルに幸せになってもらいたい、そのためにはヒロインと結婚させる必要があり、自分は悲劇しか生まない邪魔者だと信じている。目の前のセシルより、背後のシナリオを見て行動しているため、それが2人の軋轢になる場面もある。

頑ななバーティアに助力を拒否され拗ねるセシル殿下かわいいかよ。外堀を埋めて誘導すれば自分の思いどおりに動かない人間はいなかったセシルにとって、こんなにも自分を頼ってこない人間は初めてだった。
よくある「お前みたいな女は初めてだ」パターンだがよいよい。
それを寂しいと感じ、自分がバーティアを助けたいんだと自覚するセシル鈍感王太子。自分の心のことが一番よく分かってなかったね。

生まれたときから天才児のセシルが一時の激情に身を任せ、大貴族の娘であるバーティアとの婚約を破棄する裏には、ヒロインが持つ魅了の魔法があった。さらにヒロインも前世でこのゲームをプレーしていた転生者。主人公が悪役令嬢に転生した世界で、ヒロインも転生者というのはよくあるパターン。
学園はバーティアの人柄に惹かれた「バーティア様を愛でる会」中心のバーティア派が5割、ヒロインの魅了にやられたヒロイン派が2割、中立派が3割の派閥争いになっていく。
この事態を収拾してセシルはバーティアへの愛を貫けるのか。バーティアは、最早ここがゲームであってゲームではない、バーティアもセシルも、その他の登場人物も現実に生きて心があることを認め、シナリオから外れたセシルの求愛に気づけるか。
へっぽこ残念系悪役令嬢の明日はどっちだ。