読書

『サレカノ』感想

サレカノ

今回のくじらさん(@kuzira8)はTL(ティーンズラブ)小説のレビューをしていきたいと思います。

いるかネットブックスという出版社から出ている『サレカノ』です。

著者は複数のペンネームを使い分け50作以上のTL小説を電子レーベルから出版してきたベテランのようです。

そのため文章は読みやすく、途中で混乱することはありません。電子限定と言っても商業出版物なんだから当然でしょと思われるかも知れませんが、このジャンルは実際に読むとピンキリの振り幅が結構あるんです。

『サレカノ』あらすじ

出会い系サイトに試しに登録してみたところ、運命を感じられる相手である佑之介と巡り会えた藍子。
ふたりは結婚を誓い合い、ペアリングを購入するなど、ラブラブなデートを重ねていく。
しかし佑之介が仕事の関係で忙しくなると、寂しさから仲がこじれてしまうことが多くなった。
そんな中、旅行したとき佑之介の浮気が発覚する。あまりに信じられないことにすべてをブロックした藍子に、佑之介は復縁を迫るのだが――
すれ違うふたりに待っていたのは想像もしないような出来事だった!?
出版社公式サイトより

『サレカノ』を読んだ感想

出会い系サイトで巡り会った佑之介と藍子。一時は有名宝飾店でペアリングを購入するなど結婚も視野に入れた付き合いをしていたが、躁鬱に悩まされる藍子は発作的に佑之介を振り回すことがあり、一方の佑之介も藍子に隠れて浮気している。

タイトルは「『浮気された彼女』と『されど彼女は前を向いていく』」が掛かっているのかな? 躁鬱を患っている藍子の語りは他責的で連続性がなく感じられ、こういう人物を語り部とするときに必要な読者の共感を促すプロトコルが足りてないように感じました。

読者を物語の内側に招いて感情的に我がことと結びつけさせるEmotional stakeが足りてない。こういう場合、読者は批判的な鑑賞者になりがちです。

物語全体を通して裕之介という人物は細かい嘘から大きな嘘までつく姑息な人物とされ、最後も裕之介の嘘で傷付いた藍子が酷い別れ方にも挫けず、前を向いて生きていこうと決心するところで締められますが、藍子の考え方に一切のシンパシーを抱けず「こんな他責的で自分に酔った生き方していたら、また同じこと繰り返すよ」としか思えませんでした。

読み終えてから公式サイトの梗概に目を通し直すと、「すれ違うふたりに待っていたのは想像もしないような出来事だった!?」の一文が白々しく感じられます。

いるかネットブックスは手に取りやすい価格帯であること、スマホでサクッと読めることを重視して短編を中心に出版しています。しかし本作は、短編の長さでは読者が藍子に肩入れするまでの紙幅が充分に取れず、かと言って長編にするほどのパワーあるかと言われるとなく。微妙なところですね。

いるかネットブックスがメインターゲットに設定しているのは20代~40代の女性。その範疇に含まれる読者なら、もう少し違った読み方もできるのかな?

自分には、ただただ藍子が「私は悪くないもん。嘘つきの最低男に引っかかっただけだもん」と自己弁護しているように感じられ、30過ぎた大人の言動にしては幼稚だなって疑問ばかりが浮かんできました。

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